「妄想劇場 」
午後五時過ぎ、いつもよりも30分ほど遅れて、米を研ごうとした。
台所の流しに溢れ返っている汚れた食器やフライパンを目にしたら、うんざりした気持ちになった。
この食器を片付けないことには、米を研ぐ場所もなかった。
スポンジを探したけれど、どこにもない。おそらく積み重なったどこかの食器の下敷きになっているのだろう。
スポンジが見つかるまで、流し台の食器を一個一個取り除いて床に投げつけてこなごなにしてやりたくなった。
スポンジが見つかる頃には、床は、食器の破片だらけになっていることだろうけど。そうしよう。
まずは、流しの上で大きな顔してふんぞり返っているラーメンばちを思いっきり床に叩きつけてやった。
意外と歯切れの悪い音を立てて割れた。全然物足りなかった。
どうせ割れるならもっと景気のいい音を立てて割れればいいのに。
次に茶碗を投げつけた。ガリッという鈍い音がして、ほぼ半分に割れた。
なんだこのなさけない割れ方は。どうせならもっと、原型をとどめていられないくらい、こなごなに割れればいいのに。
と、こなごなになるまで何度も何度も床に叩きつけてやった。
茶碗は、それが茶碗の破片であることすらわからないくらいくらい粉々になった。
粉だ粉だ。粉になれ。みんなみんな粉になれ。
流しの中の食器が全て床に叩きつけられて粉々になることを願った。
粉が積まれて山になる。床の上に食器の粉の山ができる。
私はその粉を透明なゴミ袋に詰める。
ああ、こんな妄想に浸っている場合ではない。ほんまにお米研がんと。
